Toppict>novel



それは
ほんの些細なきっかけで起こった 
小さな奇跡

小さな道化と、願いと、花と
truth.0


町と町を繋ぐ草野原。
乾いた土の一本道。
しんと静まり返った場所には、長さの違う2つの影が細長く伸びている。
銀髪の少年が前髪を視界から軽く払うと、長い影が同じように動いた。

「アド、そろそろ行くぞ。」

そう言って、銀髪の少年は茜色の空から視線を逸らして、後ろ向きでしゃがみこむ影の先を見つめた。
アドとは、その先にいる者の名前。
視線の先では、高さ2メートルほどの広葉樹の下で、
オレンジ色の背中と黄緑色の糸の束がもぞもぞと動いていた。

「うーん…イェルカ、もう少しで終わるから待って!」

アドは相変わらず下を向いたままで、銀髪の少年の名を呼んで、返事をした。
疲れて休憩している訳ではないらしい。
しかし早くしないと街に辿りつく前に日が完全に落ちてしまう。

旅の初日からの野宿はなんとなく避けたかった。
それにアドの足元にあるらしき、彼の足を止める原因とは何なのかも気になる。
イェルカは影の先へと歩み寄り、
その手の中にある物を覗き込んだ。

「花?」

そこには少し枯れかけた小さな花があった。
薄黄色の花びらの束を支えるその茎は折れ曲がっていて、アドはそれを治そうとしていたらしい。

「このまま放っておくのは可哀相だからね…うん、できた!」

そう言ったアドは、丁度茎にバンソウコウを巻き付け終わったところだった。
バンソウコウは綺麗に貼れているとは言えないが、
花は本来の通りに天に向かってその体を伸ばしている。
細かい作業は苦手そうな手でよくやるもんだ、とイェルカは感心する。
しかし、それと同時に少々呆れた様子でもあった。

「そんな事位、言ってくれれば俺がやったのに…。」

アドの巨大な爪のような手は、人間の指のように器用に動かすことは出来ない。
それゆえに彼にとってジャグリングは容易いことでも、
このような細かい作業こなすのは至難の業であった。

「だって、何でもイェルカに頼むのはヤだもん。 ボク一人だってできることあるんだしさ。」

そう言うと、アドはいじけて頬を膨らませる。

「そうだな…。すまん、つい構いすぎてしまう。」

小さい子供見てるみたいだから、と言いかけてイェルカは手のひらで口を塞いだ。
こんなこと言ったら失礼だよな…イェルカがそう思うのも、2人は同い年だからであった。
アドの外見はどう見ても10歳の少年なのだが、
その姿は2人が出会った5年前から何一つ変わらない。
周りからは年の離れた兄弟のように思われることがしばしばあった程だ。

お師様によると、アドの記憶が欠けたのも5年前。
しかし二人の育ての親は、ある日忽然と姿を消してしまったのだ。
そのため、二人は彼の行方を辿るべく、彼に縁のある街を辿ろうとしているのだ。

「だとしてもだ。仮にも15の男が『だもん』とか言って頬膨らませるなよ。
中身まで成長止まってないよな?」
「ヒドいなあ、そんなこと無いもん!あ………。」

今度はアドがとっさに口を塞ぐ番になる
ポーカーフェイスを保っていたイェルカだが、ついに耐え切れなくなり噴き出してしまった。
イェルカはからかっていただけで、決して悪意は無い…
そうだとアドは言い聞かせたかったが、当の本人は腹を抱えて後ろを向いている。
アドを傷付けないためなのだろうか笑い声を堪えているが、むしろそれは逆効果である。

「もう!いつか絶対大きくなってやるんだからね!!」
「ふう、わかったわかった…。 さて、日が暮れそうだ。」

イェルカの肋骨にギリギリ届かない高さにある頭を、 子供を慰めるようポンポンと撫でられる。
アドはイェルカの頭のてっぺんを見上げて不満そうな顔をしながらも、 彼の後ろについていった。

ふと、1つの向かい風が2人を引き止めるようにすり抜けた。
アドが振り返るとそこにあったのは、冷たい空気と夜の訪れを知らせる景色。
夕焼け空は歩んできた道と共に、その色を少しずつ変えていた。

「じゃあね。」

歩むたびに遠ざかる、闇色に紛れていく小さな花へと。
アドは小さな微笑みを残して、再び目的地へと足を進めた。



―風ひとつない満天の星空の下。

小さな花がふわりと、笑顔に応えるように優しく揺れたのを、
一体誰が見たというのだろう?


go to next truth?




人生初、小説を自分のサイトに上げよう計画(?)がスタート。
ずっとキャラクターの設定は考えていましたが、物語という形にできないまま早●年…
ようやく管理人の重い腰がちょっとだけ持ち上がりました。

ただでさえ文章を書きなれていない人が書くお話なので、
心理描写や場面の状況が分かりづらい場面があるかもしれません。
そういった場面は挿絵で誤魔化していくと思います;

「ソラを追いかけるもの」の本編も同時進行で書いているのですが、
あっちはなかなか納得のいく出来にならなくて…。
まだ時間がかかりそうです。